『一期一会』

 

私は、現在、埼玉県内の特別支援学校の小学部に

 

非常勤講師として勤務しています。

 

「音楽の授業を受け持ってるんですか?」と

 

よく聞かれるのですが、残念ながら、

 

時間割に音楽が入っていない日に勤務しています。

 

時間ごとに全クラスを回って、授業に入っていて、

 

担当教科も全教科となります。

 

昨年度は、主にひとクラスしか入っていなかったので、

 

他クラスの子ども達とは、あまり話したことがありませんでした。

 

でも、今年度は小学部全員の子ども達と関わることができ、

 

とてもよかったなと思っています。

 

 

 

 

そして、私は高学年の児童の「自立活動」を担当しました。

 

特別支援学校においては、小中学校等と同様の各教科に加えて

 

「自立活動」という領域を設定し、個々の障がいによる

 

学習上または生活上の困難を

 

改善・克服するための指導を行っています。

 

かつて小学校の教員として勤めていた時には、

 

1年生と5、6年生の担任をすることが多く、

 

音楽教員として授業を行っていた時も、

 

主に4、5、6年生の担当だったので、

 

高学年の学習内容や子ども達の発達段階の様子は、

 

今も、心に印象深く刻まれています。

 

 

 

 

 

そんなこともあり、各教科での授業で

 

どんなことに困難さがあり、どんなことを工夫したら、

 

より学びやすく、また、より生活しやすくなるのかを考え、

 

障がいの特性を調べたり、担任の先生と連携を取ったりして、

 

1年間「自立活動」の学習を進めてきました。

 

(ここでは、具体的な学習内容は割愛します)

 

 

 

 

 

 

2月も半ばを過ぎ、授業も残り少なくなってきて、

 

「自立活動の記録」として、児童が毎時間綴ってきた

 

学習シートをまとめる時期になりました。

 

ファイルの表紙を作ることにしたのですが、

 

「自立活動の記録」というファイル名では、

 

ちょっと味気ない感じがしたので、

 

「ファイルの名前を考えない?」

 

と提案しました。

 

1週間前にそれを宿題に出したのですが、

 

なかなか思い浮かばなかったようなので、

 

「じゃあ、好きな言葉は何?」

 

と聞いてみました。

 

そういえば、高学年を担任した時、慣用句やことわざ、

 

四字熟語が好きな子達がいたことを思い出し、

 

「例えば四字熟語とか…」

 

と声をかけてみました。

 

すると、返ってきた言葉は、

 

 

 

 

「一期一会」

 

 

 

私は、心の中がほわ〜っとあたたかくなるような

 

なつかしさと温もりを感じました。

 

その言葉「一期一会」は、

 

私の好きな言葉でもあったからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

国語辞典で、「一期一会」の意味を

 

改めて、一緒に調べて、確認しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この5年生という1年間、

 

 そして、一緒に過ごした「自立活動」の時間は、

 

 一生にただ一度だけ。二度とない時間だったね。

 

 一緒に大切に積み重ねてきたね…。」

 

そんなふうに、しみじみと語り合ううちに、

 

自然と「自立活動の記録」のファイルの名前は、

 

『一期一会』がぴったりだね…

 

ということになりました。

 

そして、その後、一字一字、丁寧に記していました。

 

 

 

 

 

 

 

2月上旬には、4月から入学、編入する子ども達の

 

体験入学もあり、一緒に授業をしました。

 

卒業していく子ども達。

 

新たに出会う子ども達。

 

そして今、共にいて、進級する子ども達。

 

まもなく、春はやってきます。

 

 

 

 

 

 

 

新しい始まりの前の、残り少ない日々を

 

大切にしたいと、強く強く思いました。