心の瞳で・・・

 

音楽教室つむぎうたのピアノ・療育レッスンでは、

 

生徒さまのご事情に合わせて選曲しています。

 

ご自分で好きな曲を伝えることが難しい生徒さまは、

 

ご家族の方に、普段どんな曲を好んでいるかお聞きし、

 

数曲、私が選んで提示することがほとんどです。

 

 

 

 

1か月ほど前、ピアノレッスン3周年を迎えた生徒さまが

 

初めて「この曲を弾きたい」と自分から伝えてくれました。

 

その曲は、

 

「心の瞳」

 

坂本九さんの遺作となった歌です。

 

 

 

 

坂本九さんの歌といえば、

 

「上を向いて歩こう」

 

「見上げてごらん夜の星を」

 

この2曲は、世代を超えて、

 

今でも多くの人々に親しまれています。

 

生徒さまが、

 

なぜこの「心の瞳」を弾きたいと言ったのか、

 

ご家族の方にお聞きすると、およそ10年前、

 

中学校の卒業式で歌った歌だということです。

 

当時、特別支援学級に所属していて、

 

卒業生みんなで「心の瞳」を歌ったことが

 

今でも、とても心に強く残っているとのこと。

 

 

 

 

音楽と思い出、季節、行事、出来事などが

 

結び付くことは日常的によくあります。

 

この音楽を聴くとあの頃を思い出す…

 

といったように。

 

 

 

 

 

1月の終わりごろから、ご家族の方が帰宅すると、

 

生徒さまが、ご自宅の電子ピアノに入っている、

 

「心の瞳」の自動演奏を自分で操作して、

 

とても心地よさそうに聴いている日が続き、

 

「この曲、ピアノで弾きたい?」

 

というご家族の方の問いかけに

 

「弾きたい、この曲、弾きたい」

 

という言葉があり、

 

「この時期になると、(中学校の卒業の頃を)

 

 思い出すのだと思います。」

 

と、ご家族の方から、お話をいただきました。

 

私からも生徒さまに、直接お聞きすると、

 

「この曲、弾きたい」とはっきり答えました。

 

 

 

 

 

実はこの時まで、

 

私は「心の瞳」という歌を知りませんでした。

 

早速、インターネットで検索すると、

 

坂本九さんの遺作であり、

 

この曲が生まれた時の、坂本さんご夫婦の語らい、

 

日航機墜落事故当日のラジオ放送のこと、

 

中学校や高校の合唱祭や卒業式で

 

「心の瞳」が歌われるようになった経緯など

 

たくさん出てきました。

 

動画配信のコメント欄にたくさん書かれているように、

 

坂本九さんの「心の瞳」を聴いて、私も涙が止まらず、

 

この歌に出会わせてくれた生徒さまに、

 

「ありがとう」

 

と思う気持ちでいっぱいになりました。

 

 

 

 

 

「心の瞳」の歌詞の内容を思う時、

 

中学生、高校生というよりは、

 

私のような人生の半ばを過ぎた以上の年代の

 

人達の心情に寄り添っているような気がします。

 

けれど、音楽の歌詞や旋律というものは、

 

時を超えて人の心に在り続けるもの。

 

私には、この曲を卒業式の歌に選曲した、

 

当時の中学校の先生方の生徒達への想いが

 

強く伝わってきます。

 

この「心の瞳」が、今この時だけでなく、

 

ここから巣立っていく生徒達の

 

これからの人生を支え続けるように…と。

 

 

 

 

 

 

現在、全国の小中学校などが休校となり、

 

(埼玉県の特別支援学校は通常日課を継続中)

 

卒業式も異例の形で実施されるところが

 

多くなっています。

 

 

 

 

 

今年、中学校を卒業する学年は、

 

9年前の東日本大震災の直後、

 

幼稚園・保育園を卒園した子ども達でもあります。

 

 

 

 

切り取られてしまったような時間が、

 

何らかの形によって支えられ、

 

ともに希望を持って、

 

生きていく力となることを

 

心から願っています。

 

 

 

 

 

 

「心の瞳」1985年

 

(荒木 とよひさ作詞   三木 たかし作曲)